中世の都市はしだいに数が減っているとはいえ、まだイタリア各地に残っている。私は、これらの山岳都市を何カ所か歩きまわったが、その空間のイメージはいつか記憶の中で溶け合ってしまいそうになるくらい驚くほど似通っている。似通ってはいるのだが、もし一つだけ名前を挙げるなら、ピティリアーノという都市は忘れ難い空間として思い出の中に残っている。場所は、ローマの北、一一〇キロあたり。ブーツの形のイタリアのちょうど弁慶の泣き所の見当になる。鉄道の最寄り駅はオリヴィエート。しかし、そのオリヴィエートから五〇キロは離れているので鉄道の最寄り駅とはいえず、旅行者にはたいへん近寄りにくい。ピティリアーノヘ行くには、オリヴィエートから日に数本しかないバスを使うか、タクシーを飛ばすしかない。車でピティリアーノを目指すと、トスカーナの田園風景の中を縫うようにして進んでいく。そして突然前方にピティリアーノの町が姿を現わす。しだいに近づいてくる町は、ぶどう畑に浮かぶ石づくりの軍艦のように見える町は、まるで一叢のマッシュルームが生えているかのようだ。その姿は、堂々として、力強く、町とそこに住む人々が「私はここにいる」と声高に宣言しているようでもある。
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